障害者雇用には合理的配慮があります。
障害を持つ方が働きやすいように、いろいろ配慮していくことを合理的配慮というのですが、合理的配慮をお願いするのはわがままなんじゃないか・・・と悩む方もいるようです。
同僚の方も、「それはわがままなんじゃないか?」と思う場面もあるようです。合理的配慮がわがままなのか、事例を交えて解説していきます。
この記事では
- 合理的配慮とは
- 合理的配慮を進めるためのステップ
- 合理的配慮を求める際の準備することは?
- 合理的配慮とわがままの違いは?
- 働くための配慮とわがままの違いの事例
について解説します。
合理的配慮とは
障害者雇用では、障害を持っていて困っていることの配慮を「合理的配慮」として企業に求めることができます。
たとえば、車椅子の方が動きやすいようにスロープをつけてもらったり、視力に障害がある方に拡大鏡を利用できるように配慮することを言います。
障害者雇用の合理的配慮で障害を持つ方が働きやすい状況を作らなければならないのは、「障害者差別解消法」や「障害者雇用促進法」で保障されています。
合理的配慮を進めるためのステップ
障害を持つ方が働く上で、企業側に合理的配慮を求める場合、どのように進めていけばいいのでしょうか。
ステップ1:履歴書に配慮して欲しいことは全て書く
障害者本人や支援者、家族から合理的配慮を求めることを申し出ます。
履歴書の本人希望記入欄にあらかじめ記入しておくといいでしょう。既往歴の欄があれば、そこに記入してもいいでしょう。
書類選考の時に企業側が必要な配慮は実現可能か判断するためです。配慮して欲しいことが多いからと言って、採用されないということはありません。採用された時に長く務めることができるよう、しっかり希望は伝えましょう。
面接の段階でどんな合理的配慮が必要か聞かれることが多いので、その時に伝えるといいでしょう。
その際、遠慮せずにきちんと正直に書きましょう。
企業はどんな配慮が必要なのか正しい情報が欲しいのです。配慮が多いからといって採用されないということはありません。
採用されてから配慮が不足していて働けないということもない様に、お互いのためにも正直に全て書きましょう。
「これらの配慮をしてもらえれば、この仕事はできます」と前向きに発言すると、企業側も安心できます。
ステップ2:どこまで配慮してもらえるか企業と話す
希望する合理的配慮について、面接時に企業側と話し合います。
求めた配慮が必ずしも叶うわけではありません。その場合、可能な範囲での配慮案が企業側から提示されることがあります。
しかし、多くの企業は合理的配慮をきちんと整えて、障害者雇用をしたいと思っています。
企業側も障害者雇用を決められた職員に対して2.3%雇わなければペナルティーもあります。
自分にとって必要な配慮は正確に遠慮なく伝えましょう。
そして、企業側とその配慮は可能なのか、むりなら折衷案を導き出す必要があります。
ステップ3:社内のフォローや情報共有をしてもらう
合理的配慮の運営にあたり、企業との話し合いで決定した内容について会社の同僚や上司に情報を共有してもらう必要があります。
配属される部署にどこまで伝えて欲しいのかの意思表示を行い、働く上での合理的配慮を理解してもらうことが大切です。
部署の同僚には合理的配慮のことも理解してもらう必要があるので、しっかり話しておいてもらった方が仕事はやりやすいです。
隠していると働きにくくなり、長く働くことができません。
障害者雇用として働いていても1年定着率が50%を切っているのです。
障害をオープンにして理解してもらった方が同僚もあなたに対して配慮しやすくなるのです。
ステップ4:定期的に面談してもらい不具合を話し合う
入社前に合理的配慮を決めてもらっても、実際働いてみると不具合が生じる恐れがあります。
入社してからも合理的配慮について定期的に見直しや更新をしてもらうといいでしょう。
そのために必要なのは、企業担当者との定期的な面談や評価面接の機会です。
職場の上司などと定期的に話し合いの場を設けてもらうといいでしょう。
定期的の話し合いが持たれない場合は、自分から話し合いの場を設けて欲しいとしっかり伝えましょう。
長く務めるには、合理的配慮は必要なので、しっかり話し合いましょう。
多くの企業は人事部や上司との面接を行っているところが多いです。
合理的配慮を求める際の準備することは?
合理的配慮は障害者自身から申し出る必要があります。
会社側はどんな配慮が必要なのかわからないため、しっかり伝えばければなりません。
特に内部障害については、周囲からは見えにくいので、しっかりと伝える必要になります。
配慮を求める際の事前準備として、仕事上の困難さや自己対処法、求めたい配慮項目について書き出してまとめてみましょう。
それについて自己対処できる方法はないかをまずは考えてみましょう。
その上で、自己対処が難しいことを企業側にどのように対処してもらったら解決できるのかを考えます。
考える際に、「いつ・誰が・どのようにすればいいのか」を具体的に書き出しましょう。
配慮内容を話し合う上で、主治医からの診断書や意見書が必要になることがあります。
必要な際は主治医と相談して、合理的配慮の根拠を主治医に診断書や意見書を書いてもらいましょう。
合理的配慮とわがままの違いは?
合理的配慮とわがままの違いはなんでしょうか。
まずは、法理的配慮について考えてみましょう。
合理的というのは、
1 道理や論理にかなっているさま。「―な自然界の法則」
2 むだなく能率的であるさま。「―な処置」
引用:weblio
こう言った意味で、道理や倫理に叶っていて、無駄のな能率的な配慮をしてもらうということになります。
一方で、わがままとは、
自分の都合を中心に物事を考え、行動するさま。他人の都合を顧みないさま。「我儘」「我が侭」とも書く。
他人や周囲などの都合や事情を考えずに、自分勝手に振舞ったり発言したりすること。
引用:weblio
という意味です。
企業側の都合や同僚の都合も考えず、自分の都合ばかりを考え、自分勝手に振る舞ったり発言することです。
合理的配慮と大きく違うのは『道理や論理にかなっているさま』というところでしょう。
働くための配慮とわがままの違いの事例
合理的配慮を考える上で、「これは私のわがままになるのでは・・・?」と悩むこともあると思います。
合理的配慮は企業で働くための配慮なので、企業からすれば、長く働いてもらいたいので、しっかりどんな障害で、どんな配慮が必要なのかを知りたいのです。
それでは、合理的配慮とわがままの違いについて解説していきます。
合理的配慮とわがままの違い①
『就労スタートの時は環境の変化などでストレスが溜まりやすいので、時短勤務から始めたい。』
これは最初から伝えているので、企業も対応がしやすいです。
慣れてくれば週40時間が可能なのかどうかも話し合いましょう。
基本的に障害者雇用は週40時間なのです。しかし、精神疾患や身体障害の方は最初から長く働くことが難しいかもしれません。
でも、仕事に慣れてペースができたら、40時間働けるかもしれません。
これは良くある対応なので、わがままにはなりません。
反対に、わがままは
『ストレスが溜まったらしんどいので、帰りたい』
これはわがままです。
企業としてもどこでストレスが溜まって帰るのかわかりませんし、いきなり帰ることが続くと仕事も依頼しにくいです。
自分の都合でいきなり帰られるのは周りの人にも迷惑をかけます。
始めからストレス心配なら時短勤務を願い出ましょう。
合理的配慮とわがままの違い②
『自分で色々言いたいことがあっても自分からは言い出しにくいので、定期的に話し合いの場を設けて欲しい。』
これは上司の方も初めから伝えておくと面談を配慮してくれるので、わがままではありません。話し合いを持つことで、業務上で難しいことが出てきた時に対処して欲しいことなど伝えることができます。話し合うことで仕事がスムーズになるので、しっかり伝えましょう。
反対に、わがままは
『自分で言うのは難しいから、周りから聞いてきて欲しい』
やはり、社会人として働くのですかから、担当者の方から気づいて欲しいというのはわがままです。
上司もあなたのことだけをみているわけではありません。
他にも障害者雇用の方がいれば尚更です。
ですので、自分でしっかり自己主張をして、話し合いの場を設けてもらうように考えを変えましょう。
合理的配慮③
『自分から人に声をかけるのは苦手なので、日によっては人との会話が難しいことがあるので、机の上に話しかけてほしくない時はカレンダーを立てます。』
中には日によって精神状態が変わる方もいます。
精神疾患には波があるので仕方がないこともあります。
人と話ができないという日にはみんなにわかるサインを出すことによって、周りの同僚の人にもわかりやすいです。
反対に、わがままは
『日によっては会話が難しいので、その際は朝の自分の表情や態度をみて感じて欲しい』
これは、わがままだということはわかりますよね。自分で発信することもせず、周りに顔色をみて判断しろというのはわがままです。
周囲の人も、いつ声をかけていいのか、だめなのかわかりません。そうすると職場内の人間関係もうまくいきません。
自分でなんらかの形で発信して職場の人にわかりやすくすることが必要です。
まとめ
この記事では
- 合理的配慮とは
- 合理的配慮を進めるためのステップ
- 合理的配慮を求める際の準備することは?
- 合理的配慮とわがままの違いは?
- 働くための配慮とわがままの違いの事例
について解説しました。
障害を抱えながら働くのは大変なことです。
そのために合理的配慮があるのですが、わがままではないのでしっかり伝えましょう。
はじめに職場の人配慮を考えて伝えることが長く勤めるための秘訣です。
何も言わないから「まわりが考えて配慮してね」というのは避けたほうがいいでしょう。
しっかり長く働くことができるよう、合理的配慮をしっかり考え、企業側と話し合いましょう。